知られざるシュールの鬼才,齋藤富蔵「真珠」8号大,デュシャン系の前衛的文脈,極厚極上群青マチエル,宇都宮美術館出品,図録掲載作

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知られざるシュールの鬼才,齋藤富蔵「真珠」8号大,デュシャン系の前衛的文脈,極厚極上群青マチエル,宇都宮美術館出品作
ルネ・マグリット《大家族》を約6億円で購入へ導いた“日本屈指の大物キュレーター”が、生涯最後に選んだ作家
デュビュフェ級の物質的マチエール

無意識な夢 幻想 静寂のデペイスマン 
戦後の前衛「具体」「もの派」に続く邦人唯一の国際基準のシュール作家

 戦後日本の前衛を再編成する鬼才、齋藤富蔵「狩」約40号ミクストメディアを成行きにて出品いたします。

 シュールレアリズムの国内の歴史を塗り替える巨匠が令和になって奇跡的に発見となりました。

ルネ・マグリットを彷彿とさせる、静謐でありながら圧倒的な超現実(シュルレアリスム)の世界観。これほどの才能を持ち、海外マーケットでも十分に評価され得る真の巨星が、なぜこれまで市場の陰に埋もれていたのか。

国内屈指のシュールレアリスムコレクション、教科書レベルの日本の財産、(マグリットの至宝《大家族》)を誇り、攻めた企画展で公立美術館トップクラスの評価を得る宇都宮美術館。学芸員レベルも公立最高水準。館長は民間出身の大物キュレーター、その名門が、同郷である齋藤富蔵の封印を解き、約140点にも及ぶ大回顧展「齋藤富蔵展」を2016年に開催されたは決して偶然ではありません。

日本で最もマグリット(シュルレアリスム)の美徳と文脈を知り尽くしている谷新館長と学芸員チーム。その彼らが、自館の象徴であるマグリットの超現実主義と共鳴し、あるいはそれを日本的な抒情で超克するような「齋藤富蔵の詩的シュルレアリスム(精緻な風景と巨大な蝶・牛の対比)」を見逃すはずがなかったという事実。

宇都宮美術館の「本気」の意味はたとえば
稟議・・ 公立美術館では、学芸員の提案が委員会・教育委員会・市議会を経て承認される。 つまり「一人の学芸員の情熱」だけでは動かない。  斎藤富蔵展は、複数の専門家が「文化的意義あり」と判断した結果でございます。

著名巨匠の回顧展レベルの図録制作の異例性・・ 無名作家に分厚い図録を制作するのは極めて稀。  これは「後世に残すべき作家」としての記録保存を目的としたもの。 つまり、学術的評価の確定宣言です。

マグリットとの文脈的連動・・・
 宇都宮美術館が開館のタイミングで約6億2千万円もの巨費を投じてマグリット「大家族」を所蔵していることは象徴的。その思想的系譜を日本で継ぐ存在として斎藤富蔵を位置づけた可能性が高い。  これは単なる展覧会ではなく、美術史の再構築プロジェクトといえましょう。


宇都宮美術館初代館長、谷新氏が陣頭指揮した回顧展であること
・・本作は、宇都宮美術館において開催された 「斎藤富蔵展」に出品された作品です。本展は、政治的、名誉職的な館長ではなく、 コンテンポラリーアート界隈、アートマーケット、アートフェアを熟知する“批評家出身の本物の館長”谷新氏が自ら陣頭指揮して推し進めた回顧展である点が極めて重要です。
谷新氏は1947年長野県岡谷市生まれ。 『みづゑ』800号記念評論で一席入選後、 『みづゑ』『美術手帖』などで現代美術批評を執筆し、 1989年に美術評論家として独立。

その後、パリ・ビエンナーレ(1977)作家推薦、ヴェネチア・ビエンナーレ日本館コミッショナー(1982・1984)、光州ビエンナーレ(2000)アジアセクション・コミッショナー、水と土の芸術祭 総合ディレクター(2018)など、国際展の最前線で活躍、いわば日本の現代美術を国際舞台へ送り出す“最高レベルの役職といえます。 伊藤公象(物質の前衛)、川俣正(空間の前衛)、田窪恭治(宗教空間の前衛)、堀浩哉(思想の中核)、彦坂尚嘉(情報・社会批評)、北山善夫(関西前衛の精神性)これらはすべて、 日本の現代美術の本流をつくった作家たちを世界へ紹介してきた人物です。その谷新氏が、 宇都宮美術館の初代館長として20年間在任し、 斎藤富蔵の回顧展を“美術史的必然”として位置づけた。これは、地方館の企画ではなく、 美術史の本流をつくってきた人物が選んだ作家であるという事実です。
ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館コミッショナーは、 日本の現代美術の代表を選ぶ立場。つまり、 美術史の“選者”であり、価値の決定者。その人物が斎藤富蔵を選んだ= 美術史的必然の証明です
。

宇都宮美術館は斎藤富蔵を 「戦後美術史の空白を埋める作家」 と明言している。これは地方館の扱いではなく、 谷氏、学芸員さんが「美術史的再検証の対象」として扱ったという事実。美術館が140点もの図録を作るのは、 思想・技法・歴史的意義が揃った作家にしか行われない。マグリットを日本で最も知り尽くした谷氏、学芸員さんたちが、その運命の引き寄せに震え、「この才能を日本美術史へ還さなければならない」と確信したからに他なりません

☆谷館長が物故された2年後の2020年に開催された「宇都宮美術館開館25周年記念展」の公式チラシでは、 約6800点の収蔵作品から200点あまりの名品を選りすぐりさらに美術館がチラシ用に“収蔵品の顔”として選んだ16点の図柄の中に、 斎藤富蔵がマグリット、デュフィ、カンディンスキー、恩地孝四郎、杉浦非水と同列に配置されています。これは、美術館が斎藤富蔵を “別格の巨匠”として扱っている確定証拠です。

日本のシュールレアリズム作家といえば福沢一郎、古賀春江あたりではないかと思います。齋藤は、福沢の知的構成力と古賀の幻想性を継承しながら、 それを「自然への倫理」「社会への諷刺」「自己の変身」という三層構造に昇華しています。 つまり、日本のシュルレアリスムを“思想として完結させた”唯一の画家といえるでしょう。
福沢一郎や古賀春江が日本のシュルレアリスムの「始原」を担ったとすれば、齋藤富蔵はその思想を日本的倫理と自然観の中で成熟させた“終章の作家”です。つまり、系譜の頂点、最終到達点に位置づけても不自然ではありません。また国内の著名なシュール作家は日本国内でしか評価されませんでした。それら巨匠たちは海外のオークションハウスの出品歴は皆無であり、齋藤の作品はその国際規格な作風やシュールに珍しい国内唯一の大作主義、ネットの市場データゼロなどからいいまして唯一の海外候補ともいえます。


■ 齋藤富蔵の革新的作風 油彩を凌駕する “物質的マチェール”の境地・・齋藤作品の真骨頂は、従来の水彩画(みずゑ)(晩年ガッシュ)の概念を根底から覆す重厚な画肌(マチエール)にあります。単なる油彩絵の具の厚塗りではなく、砂や土、有機物といった絵画材料以外の物質を巧みに混入してベースを力強く盛り上げ、その表皮を滑らかな水彩顔料(アクリル)で繊細かつ丹念に描き出す。この「水性顔料による物質的マチェール」は、戦後のジャン・フォートリエやジャン・デュビュッフェ(アール・ブリュット)、アンフォルメル運動、そしてパンリアル美術協会の革新運動とも深く拮抗する、日本美術史において極めて重要な技法論的価値を持っています。

―― 深海の海底から発掘されたような、密度の結晶
画面中央に鎮座する、真珠貝を思わせる重厚な白い造形。 その背景を埋め尽くすのは、群青と金色、そして土や砂が重なり合った、深海の岩肌や太古の地層を彷彿とさせる彫刻的なマチエールです。
8号大というコレクションとして極めて飾られやすいサイズでありながら、画面から立ち上る緊張感と美意識は、100号の大作にも一切引けを取りません。静謐でありながら圧倒的な存在感を放つ、齋藤富蔵の小品における大傑作の一作です。
絵画でありながら彫刻の質量を持つこの物質美は、まさに前衛画家・齋藤富蔵の真骨頂です。

■まとめ 宇都宮美術館がその執念を結集させ、140点もの大回顧展を打った大正生まれの巨才・齋藤富蔵。
普通、戦後の日本人洋画家なら、どんな無名作家でもなんらかのマーケットで販売歴をみることできますが、これほどの画歴と作品数を誇る大家でありながら、これまで大手オークションやネットオークションにただの一点すら出回らなかったのは、もはやスピリチュアルや奇跡としか言いようがありません。

文字通り、美術史の地層から奇跡的に発見された「未踏の出土品」です。このタイミングで公開できたのも世界中のオークションハウスが注目の日本の前衛美術界の引き寄せと思ってしまいます。

展覧会図録、画集って作者名を意識しないでペラペラめくった程度でも真の大家ならそれだけで只モノではないことはわかります。回顧展の図録みれば齋藤のそれは圧倒圧巻であり紛れもない巨匠そのものであることは皆様もご理解されることでしょう。
どうぞ、古賀春江、北脇昇、三岸好太郎らシュール先駆者たちと比較されながらじっくりご検討くださいませ。シュールや前衛カテゴリーといえるこの作者は、そのカテゴリー内でいえば、作品の強い主張やストーリー性、支持体上の物質的マチエールの工夫、根本的な描画の技量、この3点をすべてコンプリートされてる作家は戦前戦後、彼だけです。
プライマリーギャラリー、美術館関係者の皆様におかれましても、今後の収蔵・展示をご検討いただく価値が十分にある作家です。

手にされたら近い将来この作品を所有して本当によかった。ご判断がまさに慧眼だったと思っていただけることでしょう。今後市場で流通するであろう作品はほぼ弊社のみであり他は宇都宮美術館と60年くらい前からの有力なパトロンのみで手放さないでしょう。
 まったく市場のデータがないのでお客様の審美眼と私共の信用のみのご判断になりますがシュールの重要作家、北脇昇の4号が毎日オークションで50万円の落札実績がございます。これはかなり参考となるデータでしょう。

紀尾井町の弊社画廊にて展示中の為、ご入札を頂く前にお店で販売した場合、削除いたしますことご容赦くださいませ。

ご検討、ご入札の程、どうぞよろしく御願い申し上げます。


作家名 齋藤富蔵
タイトル 真珠 1969年 (図録Ⅱ-37)
 創立15周年記念一陽会会員・会友特別展
 「齋藤富蔵展」出品(2016年 宇都宮美術館)
図録P56掲載
技法 紙にミクストメディア 表面は水彩、地塗りはアルファメディウムや砂。
サイズ 8号大51,2*35,2cm
額サイズ 56,5*74.8cm
サイン 右下にサインあり。
状態 作品良好。額良好。アクリル板なし。かぶせ箱あり。
備考 真作保証します。送料3000円。
略歴

齋藤富蔵(さいとうとみぞう)

【黎明期・商業美術での全国制覇】

  • 1919年(大正8年):8月18日、栃木県宇都宮市大町(現・宮島町)の豪商「齋虎商店」の四男として生まれる。

  • 1932年(昭和7年):宇都宮市商業学校(現・栃木県立宇都宮商業高等学校)入学。画家・灰野文一郎が顧問を務める商業美術部に入部し、絵画の美に開眼。

  • 1936年(昭和11年):10代にして才能が爆発。宇都宮市の依頼による公式ポスターや二荒山神社菊水祭ポスターにデザインが次々と採用され市内全域に掲示される。同年、全国の商業学校が競った「第3回全国商業美術展覧会」(日本橋・白木屋)にて創作ポスター《オキシフル》が優秀賞(最高賞に次ぐ栄誉)を受賞。全国レベルのグラフィックセンスと画面構成力を確立する。

【修行期・中央画壇と水彩画への傾倒】

  • 卒業後:京都絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)に学ぶ(のち中西利雄、荻野康児に師事)。洋画・水彩画の領域へ傾倒し、官展・画壇の既成概念にとらわれない独自表現を模索。

  • 1944年(昭和19年):《大谷石像》制作(宇都宮美術館「齋藤富蔵展」出品)。

【1960年代:水彩の概念を砕く“物質的マチエール”の革新】

  • 1960年(昭和35年):《大谷石採掘場》制作(宇都宮美術館「齋藤富蔵展」出品)。

  • 1961年(昭和36年):病を得て東京(京橋・谷中)から宇都宮へ帰郷。《さざえA》、《ペルシア壺》制作(宇都宮美術館「齋藤富蔵展」出品)。水性顔料に砂やメディウムを混入し、支持体に10ミリを超える凹凸や彫刻的線刻を施す「物質的マチエール」を確立。ジャン・デュビュッフェやアンフォルメル運動、パンリアル美術協会と同時代的に拮抗する重厚な画肌を生み出す。

  • 1964年(昭和39年):宇都宮にて初の個展を開催(案内状表紙に概念的傑作《壺中の天》を採用)。同年、《聖(宇都宮)》制作(宇都宮美術館「齋藤富蔵展」出品)。

  • 1965年~1967年:自身を「儚き蛾」に見立てた『自蛾像』シリーズを展開(《自蛾像.65》、《自蛾像.67》等)。

【1970年代:シュルレアリスムの開花と代表作『蝶と牛』】

  • 1976年(昭和51年):100号の大作《蝶と牛》(宇都宮美術館「齋藤富蔵展」出品/同館所蔵級代表作)および《牛と蝶》を発表。「弱者(小さな蝶=自分)が不断の努力によって巨大化し、強者(牛=社会的権力)を見下ろす」という下剋上の反骨精神と、「対立から融和へ」の思想を100号の画面に結晶させる。

  • 1977年(昭和52年):《牛と蝶と》制作(宇都宮美術館「齋藤富蔵展」出品)。

【1980年代~1990年代:「深山シリーズ」と幽玄の極致】

  • 1981年(昭和56年):奥日光の自然に没入し、代表的連作「深山シリーズ」を開始。名作《冬の詩》を制作(宇都宮美術館蔵)。

  • 1985年?1986年:キャンバスに密生する無数の点描・微細な筆触を重ねる技法で《幽玄風翔》、《幽玄雷翔》、《幽玄夏翔》、《幽玄秋翔》を相次いで発表(すべて宇都宮美術館「齋藤富蔵展」出品)。画面内に「結界(不浄を禁ずる布)」や「パラシュート」を配し、自然破壊を進める人間社会へ警鐘を鳴らす。

  • 1993年(平成5年):1月、教え子らの尽力により30年ぶりとなる回顧個展を開催。同年4月2日、73年の生涯を閉じる。

【没後・公的な再評価】

  • 2016年(平成28年):宇都宮美術館にて大規模回顧展「齋藤富蔵展」が開催。初期のポスター・マチエール期から100号の『蝶と牛』、晩年の『深山シリーズ』まで代表作約140点が一堂に展観され、日本の戦後美術史における「隠れた巨匠・和のマグリット」として不動の評価を確立する。

宇都宮美術館

宇都宮美術館は、地方自治体が運営する公立美術館(市立)の中で、コレクションの質、建築や環境の美しさ、そして企画展の独自性において全国トップクラスの極めて高い評価を得ています。また、所属する学芸員(キュレーター)のレベルも非常に高く、美術界において一目置かれる存在です。

〇20世紀美術とデザインを融合した屈指のコレクション
地方の「市立」美術館としては異例とも言える、世界的な名作を多数収蔵しています。
ルネ・マグリットの傑作《大家族》:同館のシンボルであり、日本の美術館にあるシュルレアリスム絵画の中でも最重要作の一つです。
モダンアートの巨匠たち:パウル・クレー、ワシリー・カンディンスキー、マルク・シャガールなどの優品を揃えています。
デザイン・グラフィック分野:20世紀のポスター、家具、プロダクトデザインの体系的な収集は、国内の公立美術館でも先駆的な試みとして専門家から高く評価されています。

〇 学術的にエッジの効いた「攻める企画展」
東京の大型美術館が開催するような「分かりやすい話題性」だけに頼りません。他館では真似できない、デザインや近現代美術の知られざる側面にスポットを当てた独自の巡回展を数多く企画し、全国の美術ファンや評論家を唸らせています。
〇 自然と調和した「うつのみや文化の森」の環境
広大な緑地公園(うつのみや文化の森)の中に佇む低層の建築は、美術鑑賞に最適な静謐(せいひつ)な空間を提供しています。景観や居心地の良さも含めた「総合的なクオリティの高い美術館」として広く認知されています。

〇学芸員(キュレーター)のレベルと実力 宇都宮美術館の学芸員チームは、日本の公立美術館界において「極めて優秀で研究熱心」と評されています。

〇質の高い「展覧会カタログ」の制作能力 展覧会に合わせて作られる図録(カタログ)の論文や資料の充実度は、学芸員のレベルを測る最大の指標です。同館の図録はデザインや学術的価値が非常に高く、美術史研究において重要な文献となるものが多数あります。

〇海外の美術館や研究者との太いパイプ マグリットをはじめとする海外の20世紀美術やデザイン史を扱うため、海外の美術館やコレクターと直接交渉し、作品を借り受ける国際的な交渉力とネットワークを持っています。

〇丁寧で深い作品解説と教育普及 専門的な知識を一般の来館者へ分かりやすく噛み砕いて伝える「エデュケーション(教育普及)」のレベルも高く、メディアの取材などでもその深い洞察力と言語化能力が度々称賛されています。

総評:宇都宮美術館は、「地方都市の市立美術館」という枠組みを大きく超え、日本のモダンアート・デザイン系美術館を牽引する重要な拠点として評価されています。これを支えているのが、予算を有効に使い、質の高い研究をベースにユニークな展示を展開されております。宇都宮美術館を開設準備から陣頭指揮された大物キュレーター、谷新館長のチャレンジングな精神は今も受け継がれております。

マチエールの変遷

〇1960年代:水彩とは思えない“厚塗り期”
水彩画の常識を完全に逸脱した“油彩的厚塗り”。
紙に砂・顔料・アクリルを混ぜた重層的な画肌。
自蛾像・真珠・静物など、モチーフの質感を執拗に追求。ガサガサした物質感
斎藤富蔵の“唯一無二の画肌”が確立した時期。
〇1970年代中期:風景+寓意の“転換期”
奥日光の風景を背景に、牛・蝶・蛾などを大きく描く新シリーズへ移行。マチエールは“厚塗り → しっとり水彩”へ変化。
木枠にキャンバスに水彩という異例の技法を多用。絵肌は薄く、光沢がなく、浸透するような質感。
物質感よりも“寓意性・構成力”が前面に出る。 《牛と蝶》はこの時期の代表作。
〇 1980年代:深山シリーズの“幻想的水彩期”
奥日光の自然を幻想的に描く「深山シリーズ」へ。
マチエールはさらに“透明・柔らかい水彩”へ移行。木枠にキャンバスに水彩
厚塗りはほぼ消え、精神性・静謐さが中心。
自然破壊への警鐘という社会的メッセージが強まる。絵肌は最も薄く、静謐で、詩的。 

『新美術新聞』2016年2月21日号(第1401号)1面トップ齋藤富蔵展 ──戦後水彩画の再考促すきっかけに
寄稿:前村文博(宇都宮美術館学芸員)
現在、地方都市宇都宮でも齋藤富蔵という画家の名前を知っている人はごく稀であろう。齋藤は原則として絵を売らず、自作の表現の場として限られた、植樹の他の画廊とも親交をむすぶことをせず、ただひたすらに制作に精魂を傾けていた。

宇都宮市に生まれ、地元の商工学校で商業美術を学んだ後、京都で仏画の修業をなし、ほどなく東京に移り住み、水彩画の革新者として活躍していた中西利雄や荻原賢児に師事する。技法的な制約からややもすれば表現の幅が狭められがちであった水彩画を、油彩画と同様の厳然とした造形原理に基づいた芸術へと高めようと奮闘したこの二人の師の教えは、齋藤の芸術にも引き継がれた。

その典型例が、一般的な水彩画のイメージとはかけ離れた重厚であるその特徴は、本展にむけた調査で齋藤が「アルファ・カラー」という画材を使用していたことが判明した点だ。アルファ・カラーは1963(昭和38)年にターナー色彩株式会社から発売された、国内初の水性樹脂絵具である。その特徴は、水で溶いて描くことができ、いったん乾くと耐水性になりヒビ割れや剥離がしにくくなる点である。いまひとつは絵具の厚塗りが容易にできる点である。色彩と立体的で厚みをもったマチエールは、光の変化や見る角度によってその表情を大きく変え、深みのある表現を生み出している.。
さらに70年代からは自然破壊の警鐘を鳴らすべく奥日光の自然を精緻な点描で描いた深山シリーズを発表するなど独自の画風を展開し遂げた。本展開催がこのような齋藤作品の特異な位相を浮かび上がらせるとともに、さきの画材の件も含めていまだ十分に検証されたとはいえない戦後日本の水彩画の歴史の再考を促すきっかけとなることを期待している。

【造形思想の検証】世界の前衛理論を肉体労働(圧倒的画力)で具現化した孤高の職人

——図録の遺品が明かす、シュールレアリスムの巨人たちとの精神的対峙

近年、ご遺族の元から齋藤富蔵先生の直筆ノート(全作品目録)とともに、先生が生前、生涯にわたってアトリエの机に置き、自らの造形思考の骨格としていた「マックス・エルンスト展オフィシャル図録(巌谷國士氏・訳)」が発見されました。
本作から溢れ出る、旧来の近代美術や日本絵画の枠組みを遥かに置き去りにするあの「純度100%の清澄な結界」と、深層心理に肉薄する奇怪なストーリー性のすべての謎は、この一冊の図録が雄弁に証明しています。先生は、世界最高峰の思想家たちが残した前衛の数式を完全に自らの血肉とし、キャンバスの上で完璧に実行に移していました。
観る者がその必然性を深く理解できるよう、図録に刻まれた3つの思想との共鳴をここに証明いたします。

1. アンドレ・ブルトンの「外観の模倣を拒絶する線」の実行
シュールレアリスムの創始者であり法王であるアンドレ・ブルトンは、同誌において『外観の模倣(見たまんまを写し取るだけの退屈な写実)ときっぱり手を切るべきだ』と説き、ただ奇妙な記号をパズル感覚で並べ立てるだけの『ただ好みの配列に甘んじること』を前衛として冷徹に拒絶しました。

先生は、1960年の裸婦素描が証明している通り、完璧なデッサン力という圧倒的な基礎体力を持ちながらも、このブルトンの思想を具現化するために、写真を模倣するような「正しいだけの写実」をきっぱりと捨て去りました。現実にあるモチーフ(壺、樹木、草原、蝶)を冷徹に扱いながらも、その外観の模倣を拒絶し、物質が放つ独自の質量(マチエール)と非日常の配置(デペイスマン)へと突き進んだのです。

2. ルネ・クレヴェルの「木こりと家具師」の比喩の超克
詩人ルネ・クレヴェルは、目の前にある自然をただ重厚に、詩情豊かに写し取るだけの従来の画家たちを『これまで通り木を切り倒しているだけの木こり』と評し、そこから全く新しい宇宙(星座)を創り出す前衛の画家を『巧みな家具師』と呼びました。

齋藤富蔵のキャンバスは、まさにこの「巧みな家具師(職人)」の仕事そのものです。ただの風景画に蝶を好みの配列で並べたのではない。観る者を日常から一瞬で隔離し、深層心理へと案内するための『目に見えない真昼の鳥』として、あの生を削ぎ落とされた奇怪な蝶たちを画面に解き放ったのです。この「線の設計の強靭さ」において、先生の表現は旧来の日本絵画の到達点を遥かに凌駕しています。

3. ジョージ・バタイユの「真面目な労働」を越えた「死生観」の定着
思想家ジョージ・バタイユは、ただ既存のルールに従ってキッチリと物を作るだけの職人を『指物師や錠前師のまね』と批判し、世界の境界線を破壊して無意識の深淵へ命を懸けて突入していく表現を『思考の死に身をゆだねる現実の外側』と評しました。

先生が自らのデッサン力を極限まで引き算し、画面のミリ単位の隙間すらも執念深い点描とハッチングの積層で埋め尽くしたのは、このバタイユの言う「死と生の境界線(死生観)」をキャンバスの上に現出させるための、求道的な狂気の歴史に他なりません。カゴメの創業者へのオマージュでありながら、トマトの赤もご尊顔も一切描かず、天に浮かぶ断層の質量と地に佇む神殿だけを配した『天と地(存在の秘密にせまる)』P100号のあの完璧な引き算の空間こそ、バタイユが説いた「現実の外側の宇宙」そのものの具現化です。

■ 既存の支援者、そして真の審美眼を持つコレクターの皆様へ
2016年の全国美術館会議(ZENBI)において、宇都宮美術館・谷新氏らが「従来の美術史の水準では語りえない独自の表現」「戦後美術史にこれまで看過されてきた表現性」と評したその精神的ルーツが、この遺品(エルンストの図録)によって完全に証明されました。彼は日本の閉塞した洋画壇のルールや商業市場を完全に無視し、最初から世界の頂点(国際基準の前衛)と真っ向から魂を響かせ合っていた孤高の天才です。

直筆ノート(レゾネ)が明かした「手元に置く以外はすべて寄贈・市場流通ゼロ」という高潔な血統。歴史の闇に封印されていた「本物の怪物」が、開かれたマーケットへと初めて解禁されます。歴史の先取り(インサイダー・バリュー)に挑むにふさわしい、真の審美眼を持つコレクターの皆様の、厳か成るご参加を心よりお待ち申し上げております。

お願いご入札の際は以下のお願いを同意されたお客様のみご参加お願い申し上げます。
1、コンディションは出品者と認識に相違が発生する場合がございますので、ご下見可能な弊社画廊で下見されたものとみなし説明内容に関わらず落札後のキャンセルおよびクレームは一切お受け致しません。
2、配送事故以外いかなる理由でも返品できません。

3、落札金額のお支払いは、ご落札日より2日以内に願います。もしご確認できない場合、キャンセルとみなし「とても悪いの評価」がつきますことご容赦下さいませ。
4、出荷はご入金ご確認次第、3日以内に出荷致します。お取り置きはご入金後3日までと致します。
5、真作を保証いたします。所定鑑定人より贋作と判断された場合、ご送金されました落札代金、それに掛かる消費税、送料を返金します。尚、保証期間はご落札日より90日と致します。
6、弊社画廊に展示中にてご入札を頂く前は画廊で売却する場合がございます。ご入札を頂き次第お取り置き致します。
下見以下でご下見になれます。
筑波商会画廊 千代田区紀尾井町3-30-1F TEL03-3221-0845 
営業時間 平日10時~17時 土日はおやすみ。

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沖縄、離島方面は送料が別途かかる場合がございます。入札前にお問い合わせ下さいませ
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