作品内容:「想定外」という言葉で片づけてはならない社会のなかのさまざまな危機について、法学、政治学、経済学、社会学の研究成果に基づく考察を通じて、人びとが危機とその対応に対する不安に向き合うための新たな視座の提供を目指す。本巻では、想定外という言葉で安易に片づけてはならない、世界、政策、組織、選択にまつわる危機について考える。【主要目次】はしがき(玄田有史)総説危機対応がなぜ社会科学の問題となるのか(飯田高)第I部危機と世界第1章政治思想史における危機対応――古代ギリシャから現代へ(宇野重規)第2章危機に対応できる憲法とは――安定性と適応性の間で(ケネス・盛・マッケルウェイン)第3章キューバ危機はなぜ回避されたのか――?時間の国際政治学(保城広至)第4章危機の元凶は中国か――?マグロ、レアアース、サンマの資源危機(丸川知雄)第II部危機と政策第5章東日本大地震後の電力危機と危機対応――将来に備えた電力システム改革(松村敏弘)第6章危機と資本――金融危機の予防策としての自己資本規制の意義と問題点の検討(田中亘)第7章政策変数としての稀少確率評価――消極的予報による中庸化政策(佐々木彈)第III部危機と組織第8章危機を転機に変える――東日本大震災と企業の危機対応(中村尚史)第9章危機対応と共有信念――明治期における鉱山技師・石渡信太郎を事例として(森本真世)第10章職場の危機としてのパワハラ――なぜ「いじめ」は起きるのか(玄田有史)第IV部危機と選択第11章アマチュア登山家の危機対応学――リーダーの要諦(中川淳司)第12章教育、家族、危機――学校に対する評価の社会経済的差異とその帰結(藤原翔)第13章移民受け入れへの態度をめぐるジレンマ――個人のライフコースに着目して(石田賢示)あとがき(飯田高)【関連書】「危機対応学」(全4冊)●東大社研・玄田有史・飯田高編『危機対応の社会科学上――想定外を超えて』(東京大学出版会、2019年11月刊)●東大社研・玄田有史・飯田高編『危機対応の社会科学下――未来への手応え』(東京大学出版会、2019年12月刊行予定)●東大社研・中村尚史・玄田有史編『地域の危機・釜石の対応――多層化する構造』(東京大学出版会、2020年2月刊行予定)●東大社研・保城広至編『国境を越える危機・外交と制度による対応――アジア太平洋と中東』(東京大学出版会、2020年3月刊行予定)★「危機対応学」刊行にあたって(東京大学社会科学研究所)危機対応の社会科学(「危機対応学」)は、社会に発生する様々な危機(クライシス)および社会そのものの危機的状況と、それに対する社会や個人の対応のあり方について、社会科学の観点から総合的に考察する新たな学問である(英語名はSocial Sciences of Crisis Thinking)。目的は、社会における危機の発生と対応のメカニズムの解明であり、同時にそこから危機を転機とするための諸条件を提示することにある。……危機対応学は、現代の多くの人々が「危機に対応できそうにない」「危機が起きても自分(たち)は無力でしかない」といった意識や不安を抱いているのではないかという問いから着想された。危機には、戦争、侵略、恐慌、不平等、人口減少、自然災害、環境問題といった集団を脅かすものもあれば、健康、家族、仕事、教育、地域、人間関係にまつわる困難など、個々の生活に直結するものまで、様々な事態が含まれる。さらに、事実や確率として明確に認識された危機だけでなく、漠然と不安に感じていたり、言説こそ罷り通っているものの、はっきりとは同定できない危機もある。危機対応学では、人々により構築されてきた社会システムと関わる、あらゆる意味での社会的な危機を考察対象とした。……「危機対応学」全4巻では、現代社会が抱える危機のあり方について、社会科学の総合知による見通しを示すことを通じ、今後様々な危機が起こっても「対応できる」という手ごたえ、もしくはそのためのヒントを示していく。