【最初期 旧 DENIME 507XXタイプ デニムジャケット/サイズL/オリゾンティ表記前/90年代前半〜中頃/初期旧ドゥニーム】
このジャケットを見ていると、90年代の日本で起きていた“ヴィンテージデニム熱”が、単なるブームではなかったことがよく分かります。
濃く残ったインディゴ、少しザラついたデニムの表情、オレンジ系ステッチ、短い着丈と横に広がるボックスシルエット。そして、1950年代のLEVI’S 507XXを強く意識した2ポケット+フロントプリーツの構成。
現在の目で見れば「2ndタイプ」と一言で説明できるデザインですが、この一着が作られたと考えられる1990年代前半〜中頃、日本のブランドがヴィンテージを再現することには、今とはまったく違う意味がありました。
今回出品するのは、DENIMEがまだ「オリゾンティ」表記になる以前のものと考えられる、かなり初期の旧DENIME。
サイズ表記はLです。
DENIMEは1988年にスタートし、その後の日本のレプリカデニム文化を語るうえで欠かすことのできない存在になっていきました。
今でこそ、ヴィンテージLEVI’Sの年代ごとの仕様を調べようと思えば、ボタン、リベット、ステッチ、パッチ、赤タブ、生地、シルエットに至るまで膨大な資料へアクセスできます。
しかし、DENIMEが始まった80年代末から90年代前半は違います。
現在のようにインターネット上へ資料が蓄積されているわけでもなく、ヴィンテージのディテールを写真付きで簡単に検索できるわけでもない。
実物を見る。
触る。
裏返す。
縫製を見る。
古いデニムがどのように縮み、どこにアタリが出て、どういう方向へ色が落ちているのかを観察する。
そして、それを日本で作る。
90年代のレプリカデニムというジャンルには、そんな“実物を解剖しながら答えを探していた時代”ならではの熱があります。
その中心にいたブランドのひとつがDENIMEでした。
そして初期DENIMEを語るうえで外せないのが、後にRESOLUTEを立ち上げる林芳亨氏の存在です。
ヴィンテージの外見だけをコピーするのではなく、デニムは着込んだ結果まで含めて完成するものとして考える。
新品の状態だけではなく、洗い、穿き、着込み、生地が痩せ、インディゴが落ちた数年後まで想像する。
後年のRESOLUTEにも通じるデニムへの考え方、その源流を感じられるのが旧DENIMEの面白さだと思います。
そして今回の一着には、まさにその時代の匂いがあります。
モチーフになっているのはLEVI’Sの507XX。
いわゆる“2nd”。
戦前から続いた506XX、通称“1st”の後継として1950年代に登場し、その後の557XX=“3rd”へと続いていく、デニムジャケット史の中でも極めて重要なモデルです。
506XXでは左胸にひとつだったポケットが、507XXでは左右対称の2ポケットへ。
フロントには1stから受け継いだプリーツを残しながら、裾にはアジャスターを配置。
そして次世代の557XXになるとプリーツは姿を消し、V字状の切り替えを持った、現在のデニムジャケットへ直接繋がるデザインへ変化していきます。
つまり507XXという服は、ワークウェア然とした506XXと、ファッションとしても完成度を高めていく557XXの間に立っている存在。
古いアメリカの作業着らしい無骨さを残しながら、左右対称の胸ポケットによってどこか整った顔も持っている。
この絶妙なバランスこそ、現在まで数え切れないほどのブランドが2ndタイプを作り続けている理由なのでしょう。
旧DENIMEは、その歴史的な507XXを90年代の日本で真正面から再構築しています。
この個体でまず惹かれるのは、まだ十分に残されたインディゴ。
何十年も前のジャケットですが、ヴィンテージ古着のように色が完全に抜け切っているわけではありません。
むしろ「ここから」という状態。
生地を見ると、現代の均質で整ったデニムとは違い、表面にはザラつきや細かなムラがあり、光が当たったときにインディゴが一色ではなく微妙な濃淡を見せます。
縫製部分には少しずつアタリが出始めていますが、まだこのジャケットの色落ちは完成していません。
袖を曲げれば肘や腕に皺が刻まれ、胸ポケットの輪郭が浮き、プリーツや袖口、裾といった生地が重なる場所からインディゴが削れていく。
数年後には現在とはまったく違う顔になっているはずです。
「古いデニムを買う」のではなく、「30年ほど前に作られたデニムの続きを自分で作る」。
そんな楽しみ方ができる個体だと思います。
濃紺のボディに走るオレンジ系ステッチも良いアクセント。
インディゴが濃い現在はステッチとのコントラストが強く、着込んでブルーが明るくなってくれば、今度はステッチが生地へ馴染んでいく。
デニムという素材の面白さは、買った瞬間が完成ではないところにあります。
さらに、このジャケットはシルエットも非常に魅力的です。
表記サイズはL。
実寸は、
肩幅:約45cm
身幅:約56cm
袖丈:約60cm
着丈:約55cm
身幅にはしっかりと余裕を持たせながら、着丈は約55cmと短い。
この「横には広い、でも縦には短い」というバランスが、まさにクラシックな2ndタイプらしいところです。
現代のオーバーサイズウェアのように肩幅、身幅、着丈をすべて大きくするのではなく、身体を包むだけの幅は確保しながら腰位置でスパッと終わる。
そのため、太めのデニムやチノ、ベイカーパンツ、軍パンなどとも非常にバランスを取りやすく、ワイドパンツ全盛の現在に改めて着ても面白いシルエットです。
むしろ1990年代に作られた服なのに、今見ると妙に新鮮。
ファッションの周期というのは面白いものです。
そして、このジャケットについて個人的に最も惹かれるのは、「復刻の完成形」になる少し前の空気を持っているところです。
現在の日本のレプリカブランドが作るヴィンテージ復刻は、本当に驚くほど精密です。
年代ごとの生地、縫製糸、運針、ボタン、リベット、縫い代、シルエットまで研究され、「そこまで再現するのか」と思うような領域まで到達しています。
しかし初期の旧DENIMEには、それとは違う格好良さがあります。
完成された教科書を見ながら再現しているのではなく、まだ答えそのものを探している。
ヴィンテージを目の前に置き、
「この生地はなぜこんな色になるのか」
「このシルエットはどうやって生まれているのか」
「1950年代のデニムを今の日本で作るならどうするのか」
そんな試行錯誤を繰り返していた時代。
だからこそ、生地や縫製からどこか人間臭さを感じます。
完璧だから格好良いのではなく、ヴィンテージへ追いつこうとしていた熱量そのものが格好良い。
それが初期の国産レプリカデニムの魅力ではないでしょうか。
90年代当時、アメリカで何十年も前に作られた中古のワークウェアを、日本の若者たちが熱狂的に探し、その服を日本の職人とブランドが研究して再び作り始める。
そして約30年後、日本で作られたデニムそのものが海外から評価されるようになる。
そう考えると、旧DENIMEをはじめとする当時のレプリカウェアは、日本のデニム文化が大きく変わっていく途中に存在していた服でもあります。
本品は後年の製品で確認できる「オリゾンティ」表記が入る以前の初期個体。
年代としては90年代前半〜中頃あたりと考えられる一着です。
すでに製造から約30年前後。
当然ながら、これから生産数が増えるものではありません。
ヴィンテージLEVI’Sとは違う。
現代の精密な復刻とも違う。
90年代の日本が1950年代のアメリカを猛烈な勢いで研究していた、その時代だからこそ生まれたデニムジャケットです。
旧DENIMEがお好きな方はもちろん、RESOLUTEがお好きな方、90年代の国産レプリカブランドを掘っている方、LEVI’S 507XXや2ndタイプがお好きな方にもおすすめしたい一着。
そして何より、まだ濃い。
飾って完成するジャケットではなく、ここから着て完成させてほしいDENIMEです。
30年ほど前、日本で誰かが「1950年代のアメリカ」を追いかけて作ったデニムジャケット。
その続きを、今度は自分で着ながら作っていく。
古いDENIMEには、そんな楽しみ方があります。
【サイズ表記 L】
肩幅:約45cm
身幅:約56cm
袖丈:約60cm
着丈:約55cm
平置きでの素人採寸ですので、多少の誤差は御理解下さい。
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(2026年 9月 22日 15時 10分 追加)AL98-26