今回出品する受信機は、局型随一の高性能機といわれた第123号です。
122号と並んで、初のトランスレス実用機として有名なモデルです。
装置の中核を担うトランスレス用真空管は、日本放送協会と東芝の共同開発。
12Y-V1(高周波増幅), 12Y-R1(再生検波), 12Z-P1(低周波増幅), 24Z-K2(両波倍電圧整流)
これに安定抵抗管B37を加えて、100Vで点火します。
倍電圧整流で200Vを得ますから、トランス式4ペンと同等の高感度、高ゲインを発揮します。
ただし、大戦末期の品質低下によってこの機は、故障多発することで悪名を馳せたようです。
特にトランスレス両波整流の電源部に故障が生じると、電源プラグの向きに関係なくシャシーに電圧が生じます。
こうなると、うかつに触ることができず、修理に難渋します。
ラジオ屋泣かせの問題児で、トランスレス機の評価を後々まで大きく損なった事は否めません。
多くは当時の電源部電解コンデンサの低品質ゆえのトラブルですから、
今の部品を用いれば、問題にするようなことではありません。
信頼性の低かったトランスレスゆえの、様々な感電対策が採られています。
・エボナイトブロックで浮かせてあるシャシー。
・アンテナ線、アース線はそれぞれコンデンサで絶縁。
・紙製フレームのスピーカー。
・簡単に外れないようにネジ留めされた裏蓋。
さて、当機は123号の中期モデルに該当し、製造会社はアリアブランドで有名なミタカ電機です。
中期モデルは、検波コイルがシャシー内部に配置されており、コイルのシールドケースを不要としています。
安定抵抗管B37が、シャシー右隅に位置しているのはメンテナンス上有利でしょう。
選局ノブはバリコン直結に変更され、従ってノブの位置は初期型よりも高い場所にあります。
私が本機に行った処置は以下の通りです。
・マグネチックスピーカー断線につき交換(紙フレーム製)
・電源部ケミコン、その他コンデンサ交換
・電源コード交換(布巻線)
・回路を初期型仕様に改変
・アンテナコイル巻き直し
・スピーカーネット張り替え
・筐体塗装リフレッシュ
・ノブの3個形合わせ(一部写真で、不揃いのものがあります。紛らわしくてすみません。)
アンテナコイルは二次側のレヤショートが確認されました。巻き直しによって性能はある程度回復しました。
それでも1000kHz以上では感度低下が起こります。
この時、高周波増幅管の12Y-V1のトップグリッドに触れると、かなりの感度で良く鳴ります。
少々の難は残りますが、放送局第123号の実働機は極めて稀です。
保守部品の少なさ、修理困難により、多くは打ち捨てられてしまった機種です。
特に安定抵抗管B37が切れた時点で、お払い箱になったのだと思います。
(マニアは、40W白熱電球が代用になる事を知っているのですが)
裏蓋を透して見える、B37の輝きに見惚れながら放送を聴く体験は、
決して他では得られないことを記したいと思います。
本機は再生式ラジオの受信操作を行います。
メインバリコンで何かを受けたと感じたら、再生バリコンを調節して最大感度に追い込んでゆきます。
発振直前のポイントが最大感度です。短波でハム局を聴くように音声を復調する操作に似ています。
スーパーには無いこの受信操作は、ラジオを聴くという行為を、より上等なものにしてくれるでしょう。
戦時下に生まれ、大量に消費されたのち今に殆ど残らない、非運のトランスレス機。
その稀有な実働品をぜひお確かめください。