幕末から明治初期に活躍した浮世絵師・歌川芳虎による木版浮世絵「廓盛日月星(くるわざかりじつげつせい)」の三枚続き揃いです。
江戸・吉原の遊廓に生きる華やかな花魁たちを描いた美人画で、画中には「五勢楼」の名が見られます。深い紺青の背景に咲き誇る桜と、色鮮やかな衣装をまとった三人の花魁が印象的な、装飾性豊かな大判錦絵です。
作者の歌川芳虎は、歌川国芳の門人として武者絵、役者絵、美人画などで活躍し、幕末から明治の文明開化期にかけて、横浜絵や鉄道絵など新時代の風俗も数多く描いた浮世絵師です。師・国芳譲りの大胆な構図と精緻な人物表現を特徴とし、明治初年には人気絵師の一人として知られていました。
本図の大きな見どころは、三枚にわたって広がる鮮烈な紺青の背景と、そこに浮かび上がる桜の美しさです。ピンクと白の花々が夜空を彩り、その前には緑青色の渦巻文様をあしらった欄干が横一線に続いています。さらに足元には紅色を基調とした豪華な敷物が広がり、画面全体が美しい色彩の調和によって構成されています。
三人の花魁は、それぞれ異なる仕草と装いで描き分けられています。左の女性は花模様の美しい青鼠色の打掛をまとい、顔を上げて隣の女性に語りかけるような姿を見せています。中央の女性は、鶴の意匠が目を引く赤い格子文様の衣装に、灰色の大きな帯を締め、やや身をかがめた優美な姿で描かれています。右の女性は、草花文様の濃藍色の打掛をまとい、伏し目がちに静かに佇んでいます。三者三様の表情と姿態が、画面に自然な動きと物語性を与えています。
興味深いのは、画面上部に記された「廓盛日月星」という題名です。「廓」は遊廓を、「日月星」は太陽・月・星を表し、花魁たちの華やかさを天体の輝きになぞらえたような、いかにも吉原らしい雅趣に富んだ題名です。また、それぞれの女性の傍らには楼名や遊女名と思われる文字が記され、単なる美人画にとどまらず、当時の遊廓文化や花魁の名を伝える資料としても興味を引きます。
江戸の吉原では、遊女たちは華やかな衣装や髪飾りによって人気を競い、その姿は浮世絵を通じて広く人々の憧れの対象となりました。こうした遊女絵は、当時の流行の着物や帯の文様、髪型、装身具を知る手がかりでもあります。本図では、髪に挿した数多くの簪、幾重にも重なる襟元、打掛の細やかな文様などが丁寧に表現され、当時の美意識を今に伝えています。
浮世絵美人画としてはもちろん、吉原の遊廓文化や江戸から明治への風俗史に関心を持つ方にもおすすめできる一組です。
一枚のおおむねサイズは 縦36.2cm × 横23.5cm(若干の誤差はご容赦ください)。
“よみネコ”くんは、身長12cm。大きさの参考になさってください。 |