朱夏 (新潮文庫)

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朱夏 (新潮文庫)
渡満、敗戦、引揚げ。死を覚悟した五百三十日の苛烈な旅。 宮尾登美子の原点となった、昭和21年、満州で見た地獄を描く。 『櫂』『春燈』から『朱夏』へ。さらに『仁淀川』へと続く、自伝的長編の第三幕。 果してまだ、日本はあるのだろうか……?同郷の土佐から入植した開拓団の子弟教育にあたる夫、生後まもない娘と共に、満州へ渡った綾子は十八歳。わずか数カ月後、この地で敗戦を迎えることになろうとは。昨日までの人間観・価値観は崩れ去り、一瞬にして暗転する運命、しのび寄る厳寒。苛酷無比の五百三十日を熟成の筆で描き切る。 『櫂』『春燈』から『仁淀川』へと連らなる宮尾文学の一大高峰。 【目次】 第一章 出発 第二章 飲馬河 第三章 逃走―営城子(一) 第四章 越冬―営城子(二) 第五章 九台 『朱夏』の衝撃 梅原稜子 著者の言葉(53年ぶりに旧満州国を訪ねて) 長い年月を経たからこそ恐怖の経験は風化されるかといえばさにあらず、汽車が飲馬河駅に近づくにつれ、私は息苦しいまでに緊張が高まり、そして駅舎のうしろにある昔ながらの給水塔を仰いだとたん、まるで噴きあげるように涙が溢れてきたのだった。 私がこの地に住・・・
9784101293097
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