戦後日本の前衛美術を代表する「具体美術協会」の元会員、堀尾貞治(1939?2018)による、1984年制作と記された立体作品をご紹介いたします。
堀尾貞治は1966年に具体美術協会へ参加し、1972年の解散まで活動。その後も既成の美術の枠組みにとらわれない実験的な制作を生涯にわたり展開した、国際的にも評価される現代美術家です。
本作は、木材、樹皮、苔状の素材などを組み合わせた山岳風景の中央に、多彩な絵具で彩られた小さな立体物を配した、極めて個性的な構成となっています。
背景には青空と山並みが広がり、手前には白い樹木が立ち並びます。その中央に突如現れる赤、黄、緑、青などの鮮烈な色彩。
自然主義的な風景と抽象的な造形物が不思議な緊張感を生み出しており、伝統的な風景表現の中へ異質な現代美術を挿入したかのような、遊び心と実験精神に満ちた作品です。
額装部分も特徴的で、木片あるいはコルク状の素材を組み合わせた独特な装飾が施されています。額自体も廃材や身近な素材を積極的に取り入れる堀尾の制作姿勢を連想させますが、作家自身による制作・加工かどうかは未確認です。
画面右上には赤色で「えびの高原」と記され、額の下部には直筆とみられる署名、1984年1月4日と読める年記、さらに「一瞬たりとも停止なし」という言葉が書き込まれています。
「一瞬たりとも停止なし」という言葉は、制作を継続する行為そのものを重視した堀尾の芸術観とも響き合う、大変興味深いものです。
本作の年記である1984年は、堀尾が翌1985年から「あたりまえのこと」を制作テーマとして展開する直前の時期に当たります。
自然の風景、日常的な素材、鮮烈な色彩、そして独特な額装が一体となった本作には、堀尾貞治の自由な発想と実験精神が感じられます。
額サイズ:縦31.5cm × 横40.5cm(若干の誤差はご容赦ください)
“よみネコ”くんは、身長12cm。大きさの参考になさってください。 |