古くからのジャズ・ファンは苦笑するだろうな、このブックレットの表紙。まどろむワンちゃんの顔とCDの内容が違いすぎるぞと。しかし、ジャズの楽しみ方が一通りである必要はどこにもない。薄暗いジャズ喫茶で黙りこくって聴いたマイルスも、蕎麦屋のBGMで流れるマイルスも、結局は同じもの。どんなシチュエーションで聴こうと、CDがどうパッケージされようと、要は演奏のよしあしだ。
というわけで本アルバムの収録曲だが、そのきらびやかなことといったらない。キャノンボール・アダレイ(とマイルス・デイヴィス)の「枯葉」にはじまり、マル・ウォルドロンの「レフト・アローン」、ジュリー・ロンドンの「クライ・ミー・ア・リヴァー」、クリス・コナーの「バードランドの子守唄」。どれも極め付け中の極めつけといえる名演だ。
中でも異彩を放つのがビル・エヴァンスとボブ・ブルックマイヤーがピアノ同士で対話する「時の過ぎるまま」。東芝EMIのカタログにエヴァンスの代表作は少ないが、これだけのラインナップをそろえておいてエヴァンスがなしというわけにはいかなかったのだろう。そこで選ばれたのが、彼の作品としてはマイナーなものであるが、珍しい顔合わせが興味を引くこの演奏だった。
そのほか、リストのピアノ曲をジャズ化したアイク・ケベックの「愛の夢」も意表をつく選択だ。曲もジャズ・スタンダードでなければ、演奏者もこのラインナップの中では地味な名前だ。ひょっとして、まどろむワンちゃんの寝顔に引っ掛けたのだろうか。
(松本泰樹)
通販商品『やすらぎ with クラシック』の大ヒットを受け、店頭販売用の“くつろぎ”ジャズ・コンピをリリース。落ちついた楽曲を中心に収録。くつろいだ表情の犬のジャケットも可愛い。
歴史的名盤の収録曲や、ジャズ・ジャイアントの名演を中心に、ミディアムからスローのメロディアスな曲を集めたコンピレーション。帝王マイルスの緊張感あふれるソロが聴ける(1)、ムーディなヴォーカルものの(8)、新主流派の(15)と、収録曲のタイプ、録音された時代はさまざま。
「CDジャーナル」データベースより