希少本 香道ものがたり 聞香のすすめ 香道の成立と歴史 香道の流派 往来物の香 『女重宝記』四三巻 『香道軌範』解題・講義 ほか
神保博行 著
めいせい出版 発行
平成5年 改定初版
約19.5x13.5x2cm
222ページ
ハードカバー
モノクロ
※絶版
日本で最初の香道研究書『香道の歴史事典 ~はじめての香り文化誌~ 』柏書房の著者であり、香道御家流皆伝、香道御家流桂雪会会長を務めた神保博行が、
日本文化としての香道についてその成立過程や精神にはじまり、著者が収拾した『香道の賤家梅』や『香道蘭之園』など古い香道の秘伝書から読み解き、一般にもわかりやすく解説したもの。
香道とは、その成立と歴史、香道の流派について、香と武士、往来物の香のほか、巻末には『香道軌範』解題・講義を収録。
聞き香のすすめの項では、香の焚き方など若干の図解あり。本文はほぼテキストで構成されています。
『香道規範』の底本は、著者の師匠にあたる梨郷翁の旧蔵本で、香道志野流蜂谷家の初代蜂谷宗悟が収録した、香道が形を整え始めた時期の伝書。元亀から天正までの香道文書の集成で、東山文化の中で生まれた組香を中心とする当時の状況を伺うことができるもので、その内容を解題講義した貴重資料。今となっては大変貴重なテキストです。
【はじめに】より
昭和二十三、四年の頃から、私は古田紹欽氏の紹介で、上野博物館内にある六窓庵の茶会に出席していた。その会には、江平達哉氏、妻屋弘氏、曽我英彦氏、殿木春洋氏や宮川一馬氏夫人、平井太郎氏夫人などがおられた。
六窓庵の茶会に出るようになって四、五年経ったある日、江平氏から、「原田邸のお香の会に出ることになったが、一緒に出てみないか」とのお誘いを受けた。これが、私の香道とのそもそもの出会いであった。
その席で、三条西さんや大倉さんに出会った。大倉久美子夫人は私に、「華道や茶道が伝統を守り隆盛しているのに、香道はそれなりの歴史がありながら、今日あいまいなものになっている。ちゃんと勉強してほしい」と言われた。これが、私の香道研究のはじまりとなった。私が現在香を聞いていられるのは、大倉夫人の指導があったからと思わざるをえない。
大学の仕事や自分の本来の研究のあいまに、私の『香道のあゆみ』がはじまった。私は、御家流桂雪会に所属し、毎月例会を重ねる傍ら、香道の勉強をはじめた。いつの間にか、机上は厖大な資料の山となっていった。苦労して入手した『香道の賤家梅』や『香道蘭之園』など古い文献に眼を通していると、香道の成立過程やその精神が見えてくる。
私はこれらから、日本精神史における香道の位置と、果たしてきた役割を論証したいと考えているが、その道は遠い。
本書は、そのような私のこれまで辿ってきた“香道のあゆみ”である。書名を『香道ものがたり』としたように、これら拙文をお読み下されば、どなたにも“香道”がご理解頂けると思う。また、そのなかから、“日本の文化”を再確認頂けることを願うところである。
【目次】 一部 小見出しも紹介します
はじめに
聞香のすすめ
匂いというもの 香料のこと わが国の春 日本文化と香 香木について 香を聞くには―その道具 香の焚き方(図解) (乱箱組付図・地敷と香道具配置図) 香手前 (総包折り様・香包・手記録図解)
香道とは
香道の成立と歴史
香道前史 薫物から沈へ 香道の成立と展開
香道の流派
香道の始祖 香道伝書による流派 『香道蘭之園』の完成 明治以降の香道
香と武士
武士と香 導誉の婆娑羅 香木の収集 建部隆勝と木所 武士の香 細川家の香 一木三銘の香 将軍と香 家康の香木 尾張家の香木 大名家の香木 志野流の武人 御家流の武人 日本人の美意識 組香の本義 留香について ほか
伊達政宗の教養
往来物の香
『女重宝記』四三巻
「香道軌範」解題・講義
概説 灰の部 四季并土用之灰 灰の方 炭団の方 香炉の品 十組十種座席之次第 礼式立錺方 茶湯香之事 袋棚図 香炉ヲ錺ル事 和心集序 茶の湯の時香焼く事 常降 第七記録の事 第八 香席之次第 ほか
おわりに
【おわりに】より
昔、香をはじめた頃、年四回の季刊「閑於里」を四、五年編集した。そのあと桂雪会を結成してからは「桂雪」にかわった。現在一一〇号をこえているが、百号になったあたりで、溜った稿をまとめてみようかと思ったことがある。殆んどは編集者として余白が出ると埋草を手当した名残りである。
ところが、卒業生に何冊か一緒に本をつくったことのある本造りの名人がいて、今迄時折り方々の雑誌などに書いた香関係のものをまとめないかと企画してきた。同君はかつて小生がカルチャーセンターでの講義を折角テープにとり、原稿にしたりしてくれたのだが、忙しさにかまけて、その儘にしてきた借りがある。とりあえず活字になっているものだけまとめてみることになったのが本書である。題名も同君がつけてくれた。要するに自分では何もしない。題名を言われるままに書きなぐっただけである。有難いことだと思わねば罰が当ると思ってはいる。
それぞれの稿の初出雑誌図書等は別表の通りであるが、それぞれ成立の事情も異り、内容的には重複もあるが、敢て手を入れなかった。責任は著者である私にある。著者の想出のためと御寛恕願いたい。九段の武道館で講義をしていた頃「武道」に連載していたものの中には政宗に関するものもあったが、これだけは除いた。
旧稿を集めてみたら、香道伝書に関するものなどまだあったが、ページ数を考えて割愛した。当初のお目当であった「桂雪」に発表したものも「香道軌範」講義以外はすべて次の機会を待つこととなった。皮肉なものである。
ここに収めたのは、これまで香道についてまったく御縁のなかった方を頭において撰んである。香道軌範は例外であるが、香道成立期の秘伝書で香道前史の様子をうかがえるので取りあげてみた。面倒な方は抜いて戴いて一向に差しつかえない。
【著者紹介】刊行当時の情報です
神保博行
大正11年、東京府に生まれる。
昭和21年、東京文理科大学文学部哲学科卒業。
中央大学工業専門学校(現中央大学理工学部)講師、中央大学商学部予科講師、文学部講師、文学部助教授、教授を歴任。香道御家流皆伝、香道御家流桂雪会会長を務めた。
現在中央大学名誉教授
著書「教育哲学の基本的考察」芦書房、「増補道徳教育の研究」(編著)福村出版、「道徳教育の研究」(編著)めいけい出版、「香と香道」(編著)雄山閣出版、「古典の事典」(共著)河出書房新社 「香道の歴史事典 ~はじめての香り文化誌~ 」柏書房 ほか